お笑いの分析・考察(by やましたゆうと)

お笑いの技術考。事務所無所属。お問合わせ:yamashitayuto.octopus@gmail.com

【お笑い】キングオブコントの会2022の考察 +コントの構造の単純化

歴代審査員、王者による豪華なエキシビジョン大会!
キングオブコントの本番が新人大会だとしたら、こちらは、ベテランのプロによるエキシビジョンでありお手本であり、これを見て若手はこのお手本を目指すしベテラン芸人は新人との完成度の違いを見せられるし、これからのキングオブコントがより楽しみになる番組でしたね。

それでは各コントを振り返ってみましょう。


①ファミレス(担当芸人 東京03、シソンヌじろう、ロバート秋山

まず今回のキングオブコントの会2022の最初の演者は、
コントに実績と定評のある東京03からのスタートでしたね。

ファミレスでの夫婦の会話という、ありふれた設定に対して、東京03のその演技力とファミレスそっくりのセットから、そのままコントを見入ってしまいました。

序盤は、東京03による王道の展開。

しかしながら、シソンヌじろうのクセの強めの学生、ロバート秋山による宗教家の登場により、東京03の流れは破壊され、最後は秋山の宗教家が全て持っていくという展開でしたね。

夫婦の浮気問題の会話から、終わってみれば

「宇宙は広いさ~宇宙の単位はギャラクシ~♪」

という謎歌しか結局頭には残らないという、秋山の破壊力コントでした。

コントの構造の分析的視点からいうと
東京03による正統派コント→じろうによる転調→秋山による破壊
という順序で、比較的単純な構造でした。


②立てこもり(担当芸人 空気階段、シソンヌじろう、東京03豊本、かまいたち濱家、どぶろっく)

「立てこもり」のニュースという題材で、空気階段の水川かたまりがアナウンサーにはまり役だった。

立てこもり現場という場面から、次から次へとキャラ芸人が登場し、「次はどんなキャラが出てくるのか!?」という期待をいちいち裏切られた。慣れ親しんだキャラを、キャラに慣れていない芸人が演じたため心をくすぐられた。

コントの構造の分析的視点からいうと
立てこもり現場という緊張状態→慣れ親しんだおふざけキャラが次々登場による緊張の緩和
という順序の構造でした。


③回収業者(担当芸人 コロコロチキチキペッパーズ、さまぁ~ず三村、東京03角田、どぶろっく、ライス関町)

一軒家の中で、出かける準備中の家族模様のコント。

まず何よりも、三村が演じるお父さん、コロチキ西野が演じるお母さん、ライス関町が演じる子供の配役がしっくり来ており、そのしっくり具合に笑ってしまった。

出かける直前の家族に対して、何の回収かと思ったが、
『伏線回収業者』であり、家の中のあらゆる伏線を回収して回るという設定は斬新であった。

おそらくさまぁ~ず三村には伝えていなかったであろうドッキリ要素のある伏線もあり、三村さんの芸人としてのベテランの力を試すという、エキシビジョン大会らしい演出も面白かった。

配役にぞれぞれがしっくり来ており、一見普通のドラマを見ているかのような楽しみ方もできましたね。

コントの構造の分析的視点からいうと
『回収業者』という題材設定→『伏線回収業者』による伏線の次々の回収という意外性のあるボケ
という順序の構造でした。


④脚本家とエグゼクティブプロデューサーの奴(担当芸人 ジャルジャルかもめんたる岩崎)

一言でいうとカミカミコントでした。

『脚本家』と『エグゼクティブプロデューサー』という言葉が言えないという
繰り返しの中で、それにお金を賭けていき、だんだんと吊り上がる掛け金の状況においても、結局はうまく言えないあたりに、福徳さんがよく演じる『残念なお偉いさん』が今回のコントにも表れた!という喜びを感じられました。

ジャルジャルらしさが表されたキャラと言葉遊びのコントでしたね。

コントの構造の分析的視点からいうと
脚本家とエグゼクティブプロデューサーと取材記者という登場人物→前者2人は何回喋っても噛みまくるリピート
という順序の構造でした。


⑤法律相談所(担当芸人 ライス、東京03コロコロチキチキペッパーズナダル空気階段もぐら)

一言で言うと、発想のギミックが上手いコントであった。

始めの待合室にいる相談者が全員同姓同名という時点で、コントの仕掛けに面食らってしまった。
そこからは、仕方なく相談内容で相談者が呼び込まれてしまうが、その相談内容がどれも恥ずかしく、佐藤さん同士のデスゲームという展開になっていった。

残る最後の2人となった時、
ライス関町の佐藤さんが「正直僕が生き残りたい、でももうどこかであなたにも死んで欲しくない。そう思っている自分がいますよ。」
というセリフの後の、東京03飯塚の「佐藤さん」というセリフでは、背景にBGMも流れているし映画のワンシーンじみていた。

展開のギミックと演技力からコント師の力を見せつけられたコント作品でありました。

コントの構造の分析的視点からいうと
法律相談所の待合室という緊張状態→相談者が全員同姓同名という意外性→情けない相談内容が次々に暴露されていくリピート
という順序の構造でした。


⑥墓参り(担当芸人 かもめんたる、シソンヌ長谷川、東京03豊本)

絵面だけで笑えるコントでありました。

死んだヤクザの兄貴が大根に変わって土に埋まっているというだけで面白いし、大根に生まれ変わっているのを恥ずかしがってるのも面白いし、「俺は今生きてる?、生(は)えてる?どっち?」と弟分に問いかけているところでは、腹がよじれるほど笑った。

なんとなく見た目から、小さいころにTVで見たであろう昔のウッチャンナンチャンのコントを思い出しました。

突き抜けた非現実さでありながら、ありそうな設定に思えるあたり、人間の脳の不思議なのでしょう。
何かの小説の設定でも出てきそうな虚構の世界観でした。

コントの構造の分析的視点からいうと
墓参りという緊張状態→強面の兄貴が大根に変わってしまった意外性→引き抜いたらセクシー大根、料理したら旨い大根だったという大ボケ
という構造でした。


⑦誇り高き者たちへ(担当芸人 どぶろっく、バイキング西村、ライス田所、ジャルジャル福徳、シソンヌじろう)

異色のコントというか、どぶろっくならではの歌ネタ。

チェリー、青春、下ネタ

というくだらないと思いながら、コンプレックスや心の琴線に触れやすい要素ですね。

このネタをどぶろっくのオリジナルバラードとして、カラオケのモニター映像で流しながら配信することを希望します。

最後のティッシュの描写が生々しかったですね。

コントの構造の分析的視点からいうと
バラード調の歌ネタ→I am Cherry boyという青春ソング
という構造でした。


⑧ママ友(担当芸人 ロバート秋山、山本、かもめんたる槙尾、バイキング西村、ライス関町)

秋山ワールド全開で面白かったー!

移動式マイサテライトスタジオを自転車で持ち運び、コミュニティFMを運営するエバラさん
という設定は、ロバート秋山のただの悪ふざけというわけではない。

中盤以降で、他のママ友たちとの間でケンカになるが、
そんな中で、主婦エバラさんの心の中の小さな不満をラジオのような公共の電波で大きく言い放ちたいというのは全国の主婦共通の願望でもあるだろう。

エバラさんにはがき職人のファンと対談相手が存在したのは謎である。

コントの構造の分析的視点からいうと
ママ友の会話というフリ設定→主婦の不満を移動式ラジオブースで放送しケンカになるというカオス展開
という構造でした。


⑨喫茶店(担当芸人 さまぁ~ず大竹、シソンヌ、かまいたち山内、ジャルジャル福徳、ロバート秋山

静かなコントでした。

茶店にて、哀愁のある老夫婦の二人がメインとなっており、以前の店全体にお客さんが多く集まっていた状態から、マスクをして席も離れてお客さんが入っているという状態は、コロナ禍の現在のようで、コント中のおばあさんもより悲しそうでした。

最後にくすぐり笑いが入っており、その前の静かな雰囲気があった分、クスクス感が増しました。

コントの構造の分析的視点からいうと
静かな喫茶店の老夫婦というフリ設定→夫から妻への愛と感動的なお客さんの協力→愛情を示した夫の他人行儀な行動というオチ
という構造でした。


⑩宅飲み(担当芸人 バイキング、空気階段もぐら、東京03豊本)

ひとつ前の「喫茶店」と反対に、騒がしいコントでした。

大量の床を覆いつくすペットボトルの海というセットに度肝を抜かれ、その部屋の中で、いくつかのアイテムは隠れているし、彼女や見知らぬ男性も隠れているしで、
スタッフの人が頑張って用意したペットボトル達が、ごみ屋敷の中で輝いていました。

「ブスキャバクラじゃねえか!」というコンプラNGな発言も、現実にありそうな無いようなであった。

コントの構造の分析的視点からいうと
部屋での宅飲みという設定→大量のペットボトルのごみ屋敷という意外性→その部屋で繰り広げられる驚きの仕掛けの数々
という構造でした。


⑪落ちる(担当芸人 松本人志、さまぁ~ず大竹、かもめんたる岩崎、東京03豊本、シソンヌ長谷川)

松本人志さんの書き下ろしのコントでした。

チェッカーズのような、ロカビリーバンドの歌の練習中という設定で、ボケやオチとしては、さまぁ~ず大竹がなぜか落ち続けるというものでした。

歌の途中でなぜか真っ逆さまに落ちた後で、平然と部屋にまた帰ってくるという謎の動きはごっつええ感じでのコントを思わせるような、松本人志的シュール展開でした。

音楽を使ってコントが進んでいくため、引き込まれやすい展開でした。

コントの構造の分析的視点からいうと
部屋でのバンド練習中の設定→なぜか大竹だけが歌の途中に落ちるという意外性→改善点を考えやり直しても、落ちる続けるというリピート
という構造でした。



キングオブコントの会の各コントの振り返りをやっていたら、意外にコントの数が多く、日曜深夜になってしまいました。
私は何をやっているのでしょうか。

誰かが見てくれることを考えて、とりあえず最後まで文を書いてみました。

今回のキングオブコントの会2022を見て感じましたが、せっかくコントを見るときには、
現実ではできそうにないことをセットを使って演じるのを見れたほうが非現実ならではの表現を感じられるので面白い気がしました。

その意味ではこのキングオブコントの会は、テレビならではの非現実要素をたっぷり感じられ面白かったです。
お金もかかっていそうでした。特別に作ったセットがもったいないので毎週続きをやってもらいたいです。

有力な笑いの説明として、驚いた後に「なんだ、そういうことか」と安心感を感じられる「無害な驚き(の時に緊張が緩和する)」=「笑い」という説があります。
意外性のある「驚く笑い」があることによって、悲しいときなどでもお笑い番組で気分転換になるという現象が起こっているのではないでしょうか。

その意味では、コント師の作った意外性の強い笑いは気分転換になる効果も強いと言えそうですね。
社会風刺や毒としての笑いの意味では、コントなどで表すことにより現実の不満の解消が起こっていると見た人の満足度が高くなりそうですね。

コントの仕組み・仕掛けがみえてしまうと驚きの笑いが減ってしまうと思いがちですが、「次にこの芸人はどう私を驚かしてくれるだろう?」と構えて視聴しよう!

以上、キングオブコントの会2022の考察でした。


以前出してみた本↓