お笑いの分析・考察(by やましたゆうと)

お笑いの技術考。事務所無所属。お問合わせ:yamashitayuto.octopus@gmail.com

【お笑い】『しゃべくり漫才入門 ボケとツッコミの基本、ぜんぶ教えます』元祖爆笑王 著の書評

しゃべくり漫才入門 ボケとツッコミの基本、ぜんぶ教えます (立東舎)

 この本は、めちゃイケ等も担当していた有名な放送作家で、お笑いのスクールである放送芸術学院専門学校にて教える内容が、本となってわかりやすく書かれている。「しゃべくり漫才」の本拠地である大阪の学校で教えている先生だけに、内容も面白い。

内容構成は、心得、漫才作りの基本、台本構成、売れるためのコツ、ネタ見せ実況中継、ナイツとの対談と、漫才作りについて入門をしっかりと学べる構成である。普段東京島、関西以外の地域に住んでいると、話はいたって普通の会話が多いが、関西での会話は、日常会話が漫才のようになるというのには驚いた。

漫才やネタ作りの基本の解説部分には、なるほどと思い、納得できる部分があり、誰でも漫才の基本を学べるだろう。また、心得や演技についても述べられているため、実際にお笑い芸人を目指いている人にとっては、実践的な本となるだろう。

ここでは、直接的にお笑いとは関係のないことに対しても言及があり、言われてみると納得できる人も多いのではないだろうか。

ネタ見せ実況中継部分では、実際の漫才想定ネタを添削していっているので、自分ならこう作り、こう添削されそうだと考えながら読むのもいいだろう。

 

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【お笑い】『天才はあきらめた』山里亮太 著の書評

天才はあきらめた (朝日文庫)
 この本は、南海キャンディーズ山里亮太さんが若い頃に書いた『天才になりたい』改訂版である。
内容は、山里さんが芸人として売れるまでの半生を描いた自伝である。この本は、何よりも読後感が良い。
月並みだが「ああ、現在女優と結婚して、芸能人として成功している人でも辛い時期があり、それを乗り越えているんだ。」と思わされる。
大学の寮での熱い仲間と触れ合った経験や、前の相方、それからしずちゃんとのエピソードなど、読んでいて心に来る場面が多い。
「モテたい」「天才になりたい」誰しも思春期を過ごすあたりからこのような感覚を覚える人は多いだろう。
日本テレビ系列の番組『たりないふたり』では、オードリーの若林さんとタッグを組み「芸人でありながらも非社交的」というどこか「たりない」と言われる部分を吐露している。
『天才はあきらめた』というタイトルだが、頑張ってもうまくいかないという人が多い中、現在の成功を手にしているというのはやはり天才なのだろう。
心の葛藤を乗り越えて、現在活躍している人の言葉はやはり刺さる。

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【お笑い】ティモンディのお笑い分析


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 今日は、ティモンディのお二人について考えてみようと思います。

 ティモンディのお二人は、グレープカンパニー所属、オレンジ色のスーツの背の高い高岸さんと、青色のスーツの前田さんのコンビです。

 そんなティモンディの特徴について考えてみます。

 まず、2人のコンビ結成のキッカケですが、元々高校の友達であったことに加え、東日本大震災を受けてのサンドウィッチマンの復興活動を見てみんなに勇気を与えられる「芸人ってすごい職業だ」と思ったことという、優しい2人らしい優しい理由ですね。

 ティモンディのネタの特徴は、高岸さんの独特の喋り方やキャラクターと、甲子園の強豪校である済美高校の元野球部員のネタです。

 お笑いのお客さんへの受けやすさで言うと、まず2人の「仲の良さ」「性格の良さ」が観客へ親しみやすさを伝え、笑いやすい雰囲気を醸し出しています。

 それから、お笑い法則の「緊張と緩和」では、少し緊張部分が少なく、特に高岸さんの雰囲気から「緩和と緩和」といった雰囲気を持っています。

 別のお笑い理論「安心感と逸脱」という観点からは、安心感たっぷりのため、今の時代の笑いの雰囲気に当に合っていると言えるでしょう。

 陽気な高岸さんに対して、冷静な前田さんがツッコミを入れることで成立していますね。

 令和では、コンビの「仲の良さ」「安心感」が売れる芸人の理由の一つになっているため、安心感をベースとしてちょっと元気で明る過ぎる高岸さんのキャラがその存在だけでほっこりします。

 高岸さんのキャラは、声がゆっくりというだけでなく、「褒める」「やればできる!」と明るくてビタミン人間ですね。

 この記事の最後に、ティモンディのお2人に提案ですが、緊張部分やメリハリをより出すために、前田さんがもっと喜怒哀楽を出すのがいいのではと私は思います。もっとも、元野球部員のネタでは、体育会系の厳しさが「緊張」の部分に当てはまるため、そこをより出していってもいいのかもしれません。

 ティモンディのお2人にこれからももっと活躍してもらいたい!

【お笑い】『科学で読み解く笑いの方程式』上下巻 小林亮 著の書評

科学で読み解く笑いの方程式[上巻]

科学で読み解く笑いの方程式[下巻]

 この本も大いに参考になった本である。

 中身の特徴は、科学的な見地から「笑い」を分析したもので、前出のサンキュータツオ氏のようなネタ分析ではなく、「笑い」そのものに焦点を当てている。

 科学者ということであって、笑いに関する医学論文にまず当たったようだが、あまり論文がないらしく、であればとこの著者が書かれたようだ。

 著者は『記憶の連合理論』を用いており、今後、笑いの研究が進むにつれ事実が明かされていくのだろう。

 科学的な見地での著者の見方は、今までのお笑いの通説を統合するような見方もあり、真実に近づいている雰囲気がある。

 また、笑えない状況との比較が「笑える」状態を明らかにしており、はっとさせられた。

 今後、この著者の言うような、「笑いの方程式」が明かされれば、AIによる「お笑いロボット」のようなものができそうである。

 

読んで頂きありがとうございました。

 

【お笑い】『悪意とこだわりの演出術』藤井健太郎 著の書評

 
悪意とこだわりの演出術

 この本は、「水曜日のダウンタウン」や年末特番の「クイズ正解は1年後」といった特色があり話題となる番組のプロデューサーである藤井健太郎氏の著書だ。

 私の既刊の『お笑い分析 中級』でもこの藤井氏を取り上げたが、彼は、今現在放送後に常にSNSでトレンドに上る「水曜日のダウンタウン」のプロデューサーというだけあって、その番組作りの仕組みが大いに気になる存在だ。

 著書は『悪意とこだわりの演出術』という名の通り、どの番組制作に対しても、藤井氏の悪意とこだわりが感じられる作りになっていることが、本人の語る内容からも覗える。

 全体の内容としては、藤井氏の担当した各番組についてのそれぞれのこだわりや、彼の仕事での工夫やこだわりが書かれている。

 藤井氏は、「水曜日のダウンタウン」にてVTRを制作してそれをダウンタウンに見せて反応を得ているので、ある意味でダウンタウンに「笑い」で勝負をしているわけだが、やはり天下のダウンタウンに対峙しているだけあって、その大変さと細かい部分までの工夫を感じられる記述となっている。

 ダウンタウンに長年間近で接している彼だからこそわかることも書かれており、お笑い芸人のキングのダウンタウンと仕事をしている彼をうらやましく感じた。

 「アメトーーク」「ロンドンハーツ」プロデューサーの加地氏の本の記述でもあったが、「ダメならダメなりの見せ方を」という部分には、こちらもネガティブなものを面白いものに変えるプロデューサーとしての力量が覗える。

 「水曜日のダウンタウン」や一風変わったお笑いバラエティ番組が好きな人にはぜひおススメの本である。

読んで頂きありがとうございました。

悪意とこだわりの演出術

悪意とこだわりの演出術

私の既刊書はこちらです。